AML(megakaryoblastic) with t(1;22)(p13.3;q13.1);RBM15(OTT)-MKL1(MAL)

[概要]

小児領域の Acute megakaryoblastic leukemia はダウン症候群患者に発症するタイプと非ダウン症候群患者に発症するタイプに分けられる。

AML with t(1;22)(p13.3;q13.1);RBM15(OTT)-MKL1(MAL)は、非ダウン症候群の乳児、とくに女児に多く見られる Acute megakaryoblastic leukemia である。

Acute megakaryoblastic leukemia の芽球は多様な形態をとるが、好塩基性でblebを有する細胞質が特徴的である。骨髄穿刺はdry tapで吸引困難である場合が少なくない。また、肝腫大は Acute megakaryoblastic leukemia の中でも、 AML with t(1;22)(p13.3;q13.1);RBM15(OTT)-MKL1(MAL)に特徴的とされる。

非ダウン症候群患者の Acute megakaryblastic leukemia にはt(1;22)(p13.3;q13.1);RBM15(OTT)-MKL1(MAL)以外にもKMT2A-MLLT3(MLL-AF9)NUP98-KDM5ACBFA2T3-GLIS2などの様々な均衡型転座があるが、その中ではt(1;22)(p13.3;q13.1);RBM15(OTT)-MKL1(MAL)は比較的予後良好であることが報告されている。

[症例]

3ヶ月、女児。3日前より哺乳不良となり受診。顔色不良を認め血液検査が行われた。身体所見で、顔色不良のほか、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。肝臓を右肋骨弓下4cm、脾臓を左肋骨弓下3cm触知。

[末梢血検査所見]

WBC6300/μL
 Blast29%
 Myelo2%
 Seg2%
 Stab13%
 Lympho50%
 Mono3%
 Eosino2%
RBC265万/μL
Hb8.1g/dL
Ht19.7%
MCV74.3fL
PLT4.5万/μL
Ret0.5%

[骨髄形態診断]

骨髄は低形成、顆粒球系、赤芽球系、巨核球系はいずれも減少している。

芽球を67.8%認める。芽球は大小不同で多様性を示し、blebを有するものが目立つ。N/C比大で、細胞質は好塩基性、核は繊細なものとやや濃染してみえるものがある。

MPO染色、特異的エステラーゼ染色は陰性、非特異的エステラーゼ染色は一部で陽性を示しNaFで阻害される。

顆粒球系、赤芽球系には明らかな異形成を認めない。巨核球系の50%以上に微小巨核球、分離多核の異形成を認める。

以上から、Acute megakaryoblastic leukemia (FAB分類 M7)が示唆される骨髄所見である。

芽球はN/C比大、細胞質は好塩基性で、核は繊細なものとやや濃染してみえるものがある。

芽球は大小不同があり多彩で、blebを有するものが目立つ。微小巨核球に類似した芽球(右下)も認められる。

ペルオキシダーゼ染色(左)は陰性。エステラーゼ染色2重染色(右上)では、非特異的エステラーゼが一部に陽性を示し、NaFで阻害(右下)される。特異的エステラーゼは陰性である。

[骨髄血細胞表面マーカー]

マーカー陽性率(%)
MPO7
CD11777
CD1360
CD3338
CD4154
CD42b54
CD6156
HLA-DR12
CD3445

[染色体・遺伝子検査]

[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
46,XX,t(1;22)(p13;q13),-7,+r1[13]
46,XX[7]

FLT3-ITD]
検出されず

[解説]

好塩基性の細胞質でblebを有する芽球増加とCD41、CD42b、CD61の巨核球系マーカー陽性から、Acute megakaryoblastic leukemia と診断できる。さらに、MPO、HLA-DR陰性所見もこの病型に合致する。

本症例は3ヶ月の発症、女児であること、肝脾腫を伴っていることなどから、t(1;22)(p13;q13);RBM15-MKL1の病型が疑われ、染色体の結果から確定診断された。

なお、染色体検査ではt(1;22)(p13;q13)以外に-7を認めたが、FISH検査ではmonosomy 7は確認できず(ほとんどの細胞で7番染色体のシグナルは2コピー検出された)、環状染色体(+r1)が7番染色体由来である可能性が考えられた。

参考文献

  • Inaba H,Zhou Y,Abla O, et al.Heterogeneous cytogenetic subgroups and outcomes in childhood acute megakaryoblastic leukemia:a retrospective international study.Blood 24;126(13):1575-84.2015
  • Bernstein J,Dastugue N,Haas OA,et al.Nineteen cases of the t(1;22)(p13;q13)acute megakaryblastic leukaemia of infants/children and a review of 39 cases:report from a t(1;22)study group Leukemia.14(1):216-8.2000

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